レセプト電子化問題

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レセプト電子化問題

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更新日 2013-02-13 | 作成日 2007-10-03

レセプト電子化問題は現実路線に

GD192_L.jpg医療業界における情報システム導入は遅れている。シード・プランニングの調査では、病院や診療所が診療内容を電子的に記録・保管する「電子カルテ」の導入率は病院で17.8%、診療所で13%。2008年の電子カルテ市場規模は1102億円、13年でも1324億円程度の予測である。

一方、医療業界で数少ないIT化が進んだジャンルとして、医事会計分野でのシステム導入やネットワークの整備がある。これは、厚生労働省が診療報酬明細書(レセプト)の提出方法を08年から段階的にオンラインに限定する省令を施行したことによる(図)。オンライン請求の実施率は09年11月時点で病院が88.2%、薬局が90.2%(社会保険診療報酬支払基金の公表値)に達した。

しかしこの分野にも、それ以外の診療所、歯科のオンライン請求実施率がそれぞれ18.3%0.1%にとどまるという問題があった(同)。「オンラインに対応できない医療機関は廃業せざるを得ず、自由に営業する権利の侵害に当たる」として、09年に全国45都府県、約2200名の医師・歯科医師で構成する原告団が横浜地裁、大阪地裁で国を提訴し、立ちふさがっていたためだ。
GD016_L.jpgオンライン請求ではレセプトのデータをコンピュータで作成し、インターネットや専用回線を利用して提出する。しかし「投資費用が効果に見合わない」といった現場の声や、廃業問題から地域の医師会や保険医協会などが義務化には根強く反対していた。

これに対して厚労省は09年11月に改正省令を施行、現実路線に転換した。まず提出方法をオンライン請求に限らず、データをCDやフロッピに格納して提出する「電子媒体請求」も認めた。

次に、オンライン請求、電子媒体請求に切り替える期限を最大14年度末まで猶予した。最後に、現在手書きのレセプトを提出している医療機関は、今後も紙レセプトによる請求を続けられるようになった。常勤の医師、歯科医師、薬剤師がすべて65歳以上の医療機関も、オンライン請求、電子媒体請求が免除される。

改正省令では同時に、診療所のオンライン請求・電子媒体請求の期限を10年7月まで延長した。「改正した省令に十分対応できるよう、余裕を持たせた」(厚労省保険局総務課保険システム高度化推進室)。

医療現場の反発の声を受け、電子化の目標は下ろすことなく、実現可能性の高い目標を再設定したわけだ。10年は「オンラインネットワークの整備」の一段階前のステップである、「レセプトデータの電子化」という一歩を踏み出す年になりそうだ。


図◎レセプトのオンライン請求義務化をめぐる最近の勤向
時期 医療機関
2008年4月 ●400床以上の病院がオンライン請求の期限を迎える
2009年4月 ●400床未満の病院(一部)と薬局がオンライン請求の期限を迎える
  病院2,256施設、薬局5,027施設がオンライン請求間に合わず
2009牛5月 厚生労働省が省令改正、オンライン請求に間に合わなかった病院、薬局に対して最大1年の猶予を認める
 厚労省が医療機関のオンライン対応のため、機器購入補助を目的とした予算を計上
2009年9月 オンライン請求の義務化撤廃を求める医師、歯科医師らと国の第一回口頭弁論
2009年11月 行政刷新会議ワーキンググループが厚労省の計上した機器購入補助を目的とした予算の来年度計上見送りを決定
 厚労省が二度目の省令改正、オンライン請求のほかフロッピやCDなど電子媒体による請求も可能に
2010年7月 ●診療所がオンライン請求、電子媒体請求の期限を迎える

(二羽はるな) NIKKEI COMPUTER 2010.1.20号より

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